2023/12/13 (WED)

【実施報告】2023年度 豊島区立小学校教員向け研修会を開催しました【地域・研修】

OBJECTIVE.

共通教育推進室(SCOLA)では、豊島区・立教大学「教育連携」協定に基づき、豊島区小学校教育研究会理科部に継続的に参加しています。
そして2007年より、理科部の先生方向けに教員研修会を年1回実施してきました。
今年度は、「感覚」に関する6つの体験をしていただき、その体験をきっかけに3つのトピックについて対話するというプログラムを実施いたしました。

【表題】 豊島区小学校教育研究会理科部 教員研修会
【内容】 感覚を通じてオモシロイこと考えよう
【対象】 豊島区小学校教育研究会 理科部 教員
【日時】 2023年11月29日(水)14:00-16:00(13:30開場)
【場所】 立教大学池袋キャンパス
【参加数】 22名
【出演者】 高橋良子

感覚ってなんだろう

「感覚」について話している様子

まずは、「感覚」「知覚」「認知」とは何か(あるいはどのように違うのか)というお話からスタートしました。
そして、私たちの感覚にはどんな種類があるのか、その感覚器官はどのように外界の情報をキャッチしているのかといった仕組みの概要についてお話ししました。

感覚体験コーナー

【嗅覚体験】立体構造を見比べながらl-メントールとd-メントールを嗅ぎ比べ

次はさっそく6種類の「感覚体験コーナー」です。

<6つの体験概要>
嗅覚l-メントールとd-メントール(鏡像異性体)の嗅ぎ分けと立体構造模型
味覚: ミラクルフルーツによる酸味と甘味の感じ方の変化
聴覚: モスキート音を使った振動数による音の変化と聞こえ方の変化
視覚: 3種類の錯視
体性感覚: 腕の筋紡錘刺激による伸展錯覚
情報統合: 視覚と体性感覚の情報の統合による、左手位置認識の錯覚

【聴覚体験】蝸牛の構造と空気の振動を音として感知する仕組みの解説を見ながら、モスキート音を試聴しているところ

それぞれの実験台には、感覚器官の解説、体験の仕方の資料があり、それを読みながら実際に体験していただきました。
そして、その後で体験の解説やこぼれ話の資料を読んで、実際に感じたことは自分の身体の中でどのようにして起こったのかと再認識していただきました。

【情報統合錯覚体験】被験者は両手を離してそれぞれ箱の中に入れ、右手の横にある鏡に映る自分の右手(左手のように見える)を見ているところ

こちらは情報統合の体験です。
被験者は両手をそれぞれ離して箱の中に入れ、右手の横にある鏡に映る自分の手を見つめます。
そして、実験者が筆を使って被験者の両手の同じ指、例えば薬指を同時にゆっくり撫でることで、被験者は右手と左手の両方の薬指が撫でられていることを体性感覚として感じます。
一方で、あたかも左手に見える鏡の中の右手が薬指が筆で撫でられているという視覚情報を同時に得ることになります。
すると、左手の薬指を撫でられた体性感覚情報と鏡の中の”左手”の薬指が撫でられている視覚情報が統合され、鏡の中の手が左手であると認識してしまうようです。
その後、被験者にどの位置に左手があると思うかと箱の上から指し示してもらうと、実際の左手の位置よりもはるかに右手に近い、鏡に映る右手の位置の辺りを指し示してしまう錯覚が起こっていました。



※この実験装置は、2023年9月30日に実施したサイエンスカフェ用に開発されたものです。立教大学現代心理学部の温文先生とSCOLA SIPの学生とで考案しました。

「感覚」にまつわるトピックスの紹介

ご紹介した本(この2冊以外にも感覚に関する本をご紹介しました)

体験コーナーの後は、感覚にまつわるトピックスをご紹介しました。

まずは、ヒト以外の動物の感覚について話題を広げてみました。
味覚:ドジョウやショウジョウバエの味を感じる場所や、ネコ、パンダ、鳥類等の味覚受容体の種類や数について
視覚:色を感じる細胞「錐体細胞」に含まれるオプシンの種類の様々な生物での比較

どの感覚に重点を置いて外界の刺激を受け取っているかを知ることで、その動物がどのような生活環境でどのように生きているのかがわかったり、生物全体の進化の様子が予測できたりします。
また、ヒトと異なる感覚器官をもつ生物たちは、注目している物も色の感じ方や音の聞こえる範囲も私たちヒトとは異なるということなので、同じ場所に居てもこの世界を全く違うように感じているのではないかということが想像されます。


次に、同じヒトであっても、受け取る外界刺激の情報が異なることで、その人と私の見ている世界は異なっているかもしれないという話題につなげました。
例えば、子ども、高齢者、視覚障害者、あるいは教室で隣に座っている同級生であっても、その人と私がみている世界は異なっているかもしれません。
そこで、伊藤亜紗さんの著書「目の見えない人は世界をどう見ているのか」とヨシタケシンスケさんの絵本「みえるとかみえないとか」をご紹介し、その後、手にとって読んでいただいたりしました。

「考えるとオモシロイ」を考えるコーナー

グループワークのひとコマ

最後に、考えるとおもしろそうだと感じたトークテーマの場所に分かれてお話しするグループワークを行いました。

感覚というキーワードを入り口に、トークテーマは3つ。
1. 私の世界は君と同じ? (私とあなたの感じている世界の違いを見つけられるか)
2. 私はどこまで?(身体拡張により私の意志で制御できる範囲が広がったら?ゲーム、仮想現実、BMI)
3. 誰の靴を履いて視る?(障がい者・高齢者・外国人・子どもになりきって自分の学校をみてみよう)

地図を読むのがうまい人や方向音痴の人とでは道を歩いていて見ている世界が違うのではないか、車で右折や左折する時などのあの制御できている感覚は車が自分の一部になっているということか、小学生は広い校庭に出るとワーっと走っていくのはどんな気持ちなんだろうなど、参加者同士のコメントで新たな気づきがあったりしながら、どのグループも話が弾んでいたようでした。

グループワークの後は、それぞれで話した内容を共有いただいて、終了となりました。
小学校の先生ならではの視点でお話しされていたり、同じ先生同士でも異なる感覚に驚かれたというお話しをうかがうことができました。

今回のプログラムでは、「感覚」を入り口にすることで、
外界の刺激を受け取るシステム、生き物の進化、みえている世界が生き物や人によって違うかもしれないこと、当たり前が当たり前ではないこと等、話が広がっていくことを実感していただけたのではないでしょうか。
今回の内容が、理科だけでなく生活、国語、道徳、総合の授業で子どもたちに話すネタとして、広くご活用いただけたら嬉しく思います。

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