2023/10/16 (MON)
【実施報告】第8回立教サイエンスカフェ「実験のおいしい喫茶店〜実験心理学で体験するこころとからだの不思議〜」を開催しました【SC教育・SCOLA SIP】
OBJECTIVE.
2023年9月30日土曜日、立教大学12号館2階リサーチコモンズにて、立教大学 現代心理学部 准教授 温文さんをゲストにお招きし、第8回サイエンスカフェ「実験のおいしい喫茶店 〜実験心理学で体験するこころとからだの不思議〜」を開催しました。
今回のサイエンスカフェは、立教大学 理学部 共通教育推進室(SCOLA)が主催するサイエンスコミュニケーション実践プログラムSCOLA SIPの2期生が主体となって企画・運営を行いました。
テーマは実験心理学。参加者のみなさんには、実験をお料理として提供する不思議な喫茶店「喫茶カルディア」にお越しいただき、心理学の実験体験や「当たり前を疑う」ことをテーマとした対話を行いました。
出てくるのは実験!?不思議な喫茶店へようこそ
参加者のみなさんが「喫茶カルディア」を訪問するオープニング映像からスタート。スタッフ全員がエプロン姿になり、会場は喫茶カルディアの店内に切り替わります。どうやらその日は常連客の温さんが監修したお料理(実験)を提供するイベントが開催されるようです。
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「喫茶カルディア」の看板
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実験が並んだちょっぴり奇妙なメニュー表
スープ ~温文さんの自己紹介~
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認知心理学者の温さんは中国出身、現在は立教大学 現代心理学部 心理学科で准教授をしています。「自分の体はどこまで(と認識して)で、且つそれをどのように制御しているか」への関心から、「運動主体感」と「身体意識」をキーワードに研究されているそうです。
ポワソン ~第1の実験~
ラバーハンド錯覚
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自分が感じる左手の位置は、筆で指し示すその辺り!(実際にはもっと左側に左手がありますね)
今回の実験は、その応用編。鏡に映った右手をラバーハンド(偽物の左手)と見立て、実際の左手・左腕は布で覆って見えないようにします。そして(本物の)両手を筆で同じようになでることで、鏡に映った右手が自分の左手であるかのように錯覚が起こる状態を作りました。その後、「自分の左手はどの位置にあるか」を当ててもらうのですが、想定の位置と実際の位置は大きくずれてしまうのです。「自分の手はここにある」と思った位置が、実際の位置よりも鏡に映った手(偽物の手)の方に引き寄せられてしまうという現象に驚きの声が多く挙がりました。明確な結果の違いに温さんも驚きます。
ソルベ ~第2の実験~、ヴィアンド ~第3の実験~
ピノキオ錯覚(運動錯覚)
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刺激を与える位置がなかなか難しい
同時に指先で鼻をつまむと、まるでピノキオのように鼻が伸びたかのような感覚が生じることから、この名前がついています。
アイトラッカーを用いた運動主体感の錯覚
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自分の視線でひよこを動かしているかも!?
センサーが視線の動きを感知し、その動きに合わせてしてパソコンの画面に映るひよこが動く仕組みになっています。「ひよこを思い通りに動かせるかどうか」という点が運動主体感の感じ方を左右するということを体験できます。遅延なくひよこが動くときは主体感を感じやすいのですが、視線の動きに対してひよこの動きの遅延が長くなると、主体感を感じにくくなります。さらに、このときの主体感の感じ方によって視線の運動パターンも変わることがあるのです。
魔法使い錯覚
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実はこの箱の中には…
ハンドジェスチャーで主体感を探索する実験
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高得点はどっち?2人で競争!
体験者は、センサーの上で手を動かすことによって画面上にある白い点を動かします。「手をどのように動かしたら点がこのように動く」という規則性が分からない間は運動主体感を感じにくいのですが、手を動かしているうちに規則性を見つけると、白い点を自分で動かしているように感じます。つまり主体感を感じやすくなるのです。
ジョイントコントロールの実験(小鳥のゲーム)
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協力して小鳥の動きをコントロール!
カフェタイム
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ホールスタッフがドリンクを運びます
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デザート 〜フィロソフィアップル〜
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思いもよらない鋭い視点に驚きます
ここまで、お料理(実験)を通して、自分の体や自分の行動といったハッキリとしたはずの感覚も疑わざるを得ない「当たり前を疑う」ような体験をしました。
そこでデザートでは、参加者のみなさんに「普段は”当たり前”だと思っていたけれど、改めて考えてみるとなぜだろう」と思える「身近な疑問」を沢山挙げてもらいました。そして、誰かが出した疑問に繋げる形で、更に新しい疑問を生み出していきます。
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疑問から更なる疑問が生まれていきます
かつてニュートンが「なぜりんごは落ちる?」という疑問を持ったことが万有引力の発見につながった、というお話が元になっています。
「なぜ何かを思い出す時に、人は斜め上を見るのだろう?」といった身近な疑問から「なぜ自分を自分と認識できるのだろう?」など哲学的な疑問まで、参加者同士だけでなく私たちや温さんも「確かに」と唸る疑問が多く生まれました。
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どのような疑問が出たかを共有し合いました
その身体、本当にあなたの身体ですか?
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今回のサイエンスカフェが、なかなか触れる機会の少ない実験心理学について知り、「当たり前を疑う」視点を得るきっかけとなっていましたら幸いです。
文:阿部莉子(法学部 4年)、岡本香純(生命理学科 3年)
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チームほっとかるでぃあ
阿部莉子、岡本香純、金子真太郎、謝 昕、鶴田莉乃、水流諒花
(2023年度 SCOLA SIP2期生)