2023/10/04 (WED)
【実施報告】第7回立教サイエンスカフェ「合成生物学でワクワクれ!ZOKKONグランプリ」を開催しました【SC教育・SCOLA SIP】
OBJECTIVE.
9月20日(水)、第7回サイエンスカフェ「合成生物学でワクワクれ!ZOKKONグランプリ」を立教大学12号館2階リサーチコモンズにて開催しました。
第7回は、立教大学 理学部 生命理学科 教授 末次正幸さんをゲストにお招きしました。
末次さんは合成生物学者として、生きた細胞が自己複製する能力に着目し、人工的に生命を「増やす」「進化させる」ことを目指し研究しています。自身でライフサイエンス企業「オリシロジェノミクス株式会社」を設立し、2023年には米モデルナ社に110億円で買収されたという経歴の持ち主です。
今回のサイエンスカフェはグランプリ仕立て。末次さんは大会実行委員長に、参加者の皆さんは「ZOKKONグランプリ」の出場者となって「”合成生物学×ワクワク”から創る新しいZOKKONなアイデア」をチームごとに考えました。
今回のサイエンスカフェは、立教大学 理学部 共通教育推進室(SCOLA)が行うサイエンスコミュニケーション実践プログラムSCOLA SIPの2期生J Billions(初田、抱井、河野、栁田、田口、権野)が主体となって企画・運営を行いました。
ZOKKONグランプリ開会式
MC河野の「Let’s ZOKKON♡」の掛け声を合図にワークがスタート
私たちの言う「ZOKKON」とは、ワクワクに合成生物学をかけ合わせることで、さらに進化させたスーパーワクワクのことを指します。参加者は5チーム(トマトレッド、ピッグピンク、ライスゴールド、ローズブルー、ポテトブラウン)に分かれ、ZOKKONなアイデアを作り出し、最終的にグランプリを取ることを目標とします。
まずはその準備として、グループのメンバーで「自分のワクワクするコト・モノ」をジェスチャーで表現する「ワクワクジェスチャーゲーム」を実施しました。
さて、どんなワクワクでしょう?
末次さんによるZOKKONトーク
参加者のテーブルには、押すと「ZOKKON!」と音声が鳴るZOKKONボタンが設置され、リアクションツールとして使われます。
ZOKKONトークの冒頭では、末次さんもワクワクジェスチャーゲームにチャレンジ!末次さんがジェスチャーしたものはDNA。そもそも微生物に興味を持ったことが研究のきっかけだそうです。
末次さんのZOKKONなお話に参加者も興味深々でした
合成生物学とは、人工的に配列をデザインした遺伝子を微生物に導入したり、DNAや酵素を混ぜ合わせて生命の基本的な反応を人工的に試験管内でつくったりすることを指します。「言葉からイメージされる、絶滅した種を蘇らせるような事はしていないんですよ」と末次さんは話します。
では、そもそも生命とは何でしょうか。
末次さんの生命の定義は「自己複製して進化すること」。末次さんは、微生物を使わずにこれらの機能を人工的に造り出す研究をしています。
起業のきっかけとなったのは、DNAが大腸菌の中で増える仕組みを調べる研究だったそうです。末次さんは試験管内でDNAを増やす仕組みを作っていた際に、DNAが倍増するために必要な因子を発見しました。この技術をアピールしていたところ、投資家や社長が見つかり、オリシロの設立に至ったそうです。
「その技術はどのように利用できるのか」という質問には、「植物のゲノム情報をデータベースから取ってきて、自分でDNA配列(ゲノム)を造ります。これを機能を持つようにしたり長くしたりするときに複製技術が必要になります。ゲノムを長くして、たくさん増やして細胞に打ち込むことで薬を大量生産することもできるようになります。」とコメント。
ゲノムを長くして増やすという末次さんの技術はやがて、DNAを造る技術を探していたモデルナ社の目に留まります。オリシロは110億円でモデルナ社に買収されました。このことにより、モデルナ社は設計したDNAを従来より簡単にかつスピーディに造り出し、それらを量産することができる技術を手に入れたこととなります。
ZOKKONトークの最後には、末次さんに「科学技術を社会で用いる上で気を付けたこと」について伺いました。
DNA増幅キットを販売する際には、ゲノム情報を基にウイルスを作るなどの悪用を防ぐために、企業と大学の研究者しか使えないようにし、誓約書を書いてもらうようにしたそうです。
末次さんのお話に参加者からは「へぇ〜!」と驚きの声が上がっていました。
ZOKKONワーク
チームで力を合わせて、斬新かつZOKKONなアイデアを創り出していきます。ポイントは開会式で共有した「参加者自身のワクワク」と、ZOKKONトークで末次さんから学んだ「合成生物学」とをかけ合わせること。ただし、科学技術を社会で利用する際には、様々なことに配慮しなければなりません。生み出したZOKKONアイデアを社会で実現するための視点についても話し合いました。
合成生物学の応用例
「他の生物の性質を持たせる」(例:ゴールデンライス、ブルーローズ)
「元々持っている性質を高める」(例:GABAトマト、肉厚マダイ)
「新たな性質をデザインする」(例:ブリュード・プロテイン、バイオプラスチック)
「有害な物質を取り除く」(例:毒のないジャガイモ、異種移植における拒絶反応の阻止)
J Billionsの田口が合成生物学の応用例と科学技術を広める際に配慮すべきポイントについて紹介します
末次さんも各テーブルを回りながら、参加者と一緒にアイデアを創り出します
参加者どうしで互いのワクワクや、そこから生まれたアイデアについて関心を寄せ、楽しく活発な対話が行われていました。アイデアを生み出すことに苦戦をしていた人もいましたが、チーム内の他の人の意見を聞くことで、発展的なアイデアを生み出していました。
アイデアの発表、投票タイム
どのアイデアもワクワクするものばかり!
発表の際にはIPPONグランプリを参考に、3つのフリップ
「ワクワク×合成生物学、どんなの?」
「ZOKKONなアイデア、教えてください」
「そのアイデアを実現するには?」
を活用しました。
参加者からはそれぞれ、「折れない木」「気まぐれに色を変えられるインク」「光ることができて、刺されない蚊」「二日酔いしないお酒」「酵母を早く増やすことができる微生物」といった面白いアイデアが出ました。末次さんからは各チームに対するZOKKONな視点や、合成生物学から見た実現可能性についてコメントをもらいました。
発表が終わるとワクワクが”進化”してスクリーンに”ZOKKON”が出現!
110億オリーはオリシロの買収額である110億円をオマージュしたオリジナル通貨です
各チームの投票箱にお札が溜まっていきます
表彰式、閉会式
グランプリに輝いたチームには、末次さんからメダルが送られました!
栄えあるグランプリに輝いたのは……ローズブルーチーム!!
「光ることができて、刺されない蚊」というアイデアに600億オリーが集まりました。
そして、全てのチームに、作り上げたアイデアと集まった金額が記された証明書が授与されました。
最後はみんなで「Let’s ZOKKON♡」
今回のキーワードは「ワクワクをZOKKONに」。周りからの評価を気にせずにワクワクを探求し続ける末次さんの姿勢は、最終的に大きな価値を生み出しました。あなたのワクワクも追求し続ければ、いつの日か価値が生まれることにつながるかもしれません。さあ、あなたも、Let’s ZOKKON!!!!
文:初田理紗(化学専攻 修士1年)、権野にこ(物理学科 3年)
チームJ Billions
初田理紗、抱井優希、河野大輔、栁田遼太郎、田口莉子、権野にこ
(2023年度 SCOLA SIP2期生)