2024/08/22 (THU)

【実施報告】おもしろサイエンスワールド2024を開催しました【地域・おもしろ】

OBJECTIVE.

立教大学理学部では、毎年夏休みに子ども向けの科学イベント「おもしろサイエンスワールド」を実施しています。
2024年度のテーマは「リガクゲート〜4つの体験で理学のヒミツを解きあかせ!〜」。

立教大学理学部では、4学科(数学、物理学、化学、生命理学)の研究者が、学生と一緒に研究を日々行っています。
それぞれの研究者はいったいどんなことを考えて研究をしているのかな?研究するってどんなことなのかな?
そんなことを小中学生のみなさんに考えたり感じたりしてもらえる4種類の研究者体験をご用意しました。

当日は、小学生親子と中学生の参加者は、STEP1からSTEP4まで順番に挑戦し、時に各学科の大学生に質問したりしながら、それぞれのコンテンツを楽しんでいただきました。
【数学科】始まりは直感!数学者の旅
【物理学科】知りたいことを知るために、見たいものを観るために
【化学科】ミクロな世界と不思議なメガネ
【生命理学科】生き物戦国時代
【その他】推し本紹介
【その他】立教マイツリープロジェクト

<開催概要>
日時:2024年8月8日(木) 10:00-16:00
対象:小学生とその保護者、中学生
会場:立教大学池袋キャンパス
主催:立教大学理学部
後援:豊島区教育委員会
参加者数:269名

【数学科】始まりは直感!数学者の旅(監修:杉山健一 教授、阿部拓郎 教授)

「一筆書きに挑戦!」と「植木算に挑戦!」の2つのコンテンツに挑戦してもらいました。

数学科のSTEPsは
 STEP1: 直感でわかる!?
 STEP2: ルールを考えてみよう
 STEP3: 説明してみよう
 STEP4: 問題を作ってみよう
でした。
一筆書きに挑戦!

平面図形だけでなく立体図形について、まずは一筆書きができるかできないかのクイズに挑戦しました。
立体図形は、模型を使いながら考えていきました。
一筆書きができる図形とできない図形には、どんな違いがあるかな?そんな疑問をスタートに、一筆書きのルールを「なんとなく」探っていきます(←なんとなくが大事!?)。
一筆書きのルールを言葉にしてみて、最後は自分で問題を作って付箋に描いて壁に貼りました。

こちらは、立体図形の模型とワークシートとで一筆書きについて考えている小学生と保護者の様子。
モールとストローを使って参加者自らが立体図形を作りながら、一筆書きができるかどうか考えることもできました。

監修:杉山健一 教授
植木算に挑戦!

まずは、一本の直線を2点で分けるといくつになるのかという「植木算」からスタート。そして少し応用編として、1つの平面を2つの直線で分けるといくつにわけられるかを考えました。
次に、1つの平面の「1」、直線の数、わけられた数の3つの数を使って共通した式ができないかな?と考えてみました(ルールをなんとなく考えてみる)。
そして作った式を言葉で説明することに挑戦して、最後には問題を作ってもらいました。

小学生でも保護者の方と一緒に、そして大学生や監修の先生とお話ししながら、粘り強く挑戦している姿に驚きました。
右側の写真は、監修の阿部先生がイベントの様子を見に会場に来た時に居合わせた参加者がヒントをもらっている時の様子です。

監修:阿部拓郎 教授
「一筆書き」も「植木算」も、STEP4まで取り組んだ参加者は、問題を作って壁に貼ってもらいました(左の写真)。

その中から、2つの作品をご紹介します。
右上の図は一筆書きの問題です。代表的な一筆書きである星をたくさん組み合わせた楽しい図形を考えてもらいました。さて、これは一筆書きできるでしょうか?

右下の図は植木算の問題です。少し発展的な植木算の問題を考えてくれました。ワークシートで紹介した図は全て、直線と直線が交わっている点(交点)は2本の直線が交わっているだけでしたが、この問題では3本の直線が1点で交わっています。さてこの場合、式のルールは変わるのでしょうか?


【物理学科】知りたいことを知るために、見たいものを観るために(監修:平山孝人 教授)

物理エリアでは、自分だけの装置づくりに挑戦してもらいました。


物理学科では、研究者によって研究対象は様々ですが、目で直接見ることのできないモノは測定装置によるデータからその状態を知る(観る)ということをします。
もしも測定装置が世の中にない場合は、自分で設計して装置を作る必要があります。今回は、どんな情報が必要か考え、どんな装置にするかを考え設置するといった体験をしてもらいました。


STEP1では、大きな3つの箱ABCの中に隠されているものが、バレーボール、習字用文鎮、消しゴムのうちどれなのかを当てるというものでした。
箱の中身に触れたり見たりすることなく予想しなければいけないという制約があるので、どんな情報を得ることができれば答えを導き出せるのかを考えてもらいました。
参加者は、触って確かめることのできない箱の中身を、いくつかの情報を得て大学生と一緒に予想しました(左の写真)。

STEP2では、小さな鉄球を金属の円板や四角い板に当てた場合のその跳ね返り方など、鉄球をどのようにしたらどんな動きになるのか試行錯誤しました。

STEP3では、箱の中に隠されたものがどれくらいの大きさでどのような形なのかを当てる実験に挑みました。
鉄球を転がすためのレーンをどの位置に設置するのかを決めて、鉄球を箱に向かって転がします。
左の写真は、鉄球がどんなふうに跳ね返ったのかを大学生が説明しているところです。

そしてSTEP4では、実験結果をもとにして箱の中のモノを予想します。自分の結果だけでは答えがわからない場合は、他の人の結果も使って答えを導き出しました。

【化学科】ミクロな世界と不思議なメガネ(監修:山中正浩 教授)

化学の研究者はミクロな世界である分子や原子のレベルで日々研究をしています。
そこで今回は、私たちもよく知っている「におい」を通じて、そのミクロなレベルで世界をみる感覚を体験してもらいました。

STEP1では、小瓶に入っているメントールという物質のにおいをかぐことからスタートしました。
そして隣の小箱の「不思議なメガネ」を通してメントールを見ると、分子レベルで見た場合のメントールの分子模型がみられました。

左の写真は、監修の山中先生が会場を訪れた時に、参加者とお話をしているところ。
STEP2では、「メントール」と11種類の「においレセプター」の分子パズルを使って、においを感じる仕組みを体験しました。

さらにSTEP3では、4種類のにおい分子がどんな匂いになるのか、分子パズルを使って調査しました。

最後のSTEP4では、炭素のくさりを長くしたり、官能機と呼ばれる部分を付け替えたりすることで、においは変化するのかどうかを調査しました。
参加者自身が分子の部品と部品を組み合わせてにおい分子を作ってにおいレセプターにはめてみることで、どんなにおいがするのかを確かめました。

写真は、分子パズルをにおいレセプターに順番にはめてみながら、ワークシートと見比べてどの匂いがするのかを考えているところ。
左の写真は、最後に、大学生と一緒に分子パズルの答え合わせをしているところ。









【生命理学科】生き物戦国時代(監修:塩見大輔 教授)

生命理学エリアでは、細菌のカードゲームを通して細菌の生存戦略を知り、そして「生物ってなんだろう」「生きているとはどういうことなのか?」といったことを考えてもらいました。


STEP1と2では、私たちに身近な「細菌」について、そして細菌が生きるための多様な戦略を知ることからスタートしました。
左の写真は、アニメ「はたらく細胞」に登場した細菌のイラストも交えつつ、細菌が地球上の様々な環境に広く分布しているという説明を読んでくれているところです。

STEP3では、細菌のカードゲームを通して、細菌になりきって生きるための戦略「アクションカード」を使いながら、自分の数をいくつまで増やすことができるのかに挑戦しました。
右の写真では、大学生の説明を受けてカードゲームを始めるところ。
STEP4では、「生き物」「生きること」について自分の考えをふせんに書いてもらいました。

小学1年生から大人まで様々な考えを書いていただきました。
一部をご紹介します。




【その他】推し本紹介

今の子ども達への「推し本」のポップ

立教大学理学部教員や豊島区立小中学校の教員の「推し本」を紹介しました。

推し本のカテゴリは次の3つ。
 ・今の子ども達へのオススメの本
 ・今の自分に影響を与えている本
 ・自分が子どもの頃に好きだった本

小学校低学年から中学生、高校生向けにレベル分けして、コメント入りのポップと共に実物の本を展示しました。

今の自分に影響を与えている本 (水色)と自分が子どもの頃に好きだった本(ピンク色)のポップ

各学科のコンテンツで監修いただいた先生方の「推し本」も含まれていたのですが、科学や研究とは一見関係のなさそうな文学作品、歴史小説やミステリ作品も多く、研究者の意外な一面を見ることができました。

たくさんの参加者が本を手に読んでくださっていました。新しい本との出会いをプレゼントできたのではないでしょうか。

【その他】立教マイツリープロジェクト

2022年度の「おもしろサイエンスワールド」から毎年、立教大学池袋キャンパスの樹木を測定するプロジェクト「立教マイツリープロジェクト」を実施しています。
今年も、希望者のみでしたが実施することができました。

「おもしろサイエンスワールド2024」を実施した建物の近くの樹木からお気に入りの1本を決めて、その樹木の太さを測定しました。

表 2024年8月8日にイベント内で樹木測定した結果

選んだ樹木の学名と測定結果のDBH(地面から130cmの高さの幹の直径)等を専用のアプリに入力することで、1年間にその樹木が吸収できる二酸化炭素量を予測することができます。
今回使用したアプリはMyTree (https://mytree.itreetools.org/#/)です。

今回測定した樹木のうち最も二酸化炭素吸収量が多いと予測されたイチョウでは、年間51.32kgの二酸化炭素を吸収するという予測がされました。これは普通自動車が200km走行する時に排出する二酸化炭素量に匹敵するそうです。
今回のおもしろサイエンスワールド2024では、数学・物理学・化学・生命理学のコンテンツ、そして推し本と立教マイツリープロジェクトと、たくさんのコンテンツを参加者自身のペースで自由に体験していただきました。
いただいた事後アンケートを見ると、どれか一部に人気が偏ることなく、どの参加者も好みに合ったコンテンツを見つけることができて、全体として楽しんでいただけたようでした。
このイベントを通じて、理学の魅力と研究者の魅力を感じていただけたら嬉しいです。

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