2025/11/10 (MON)
【実施報告】サイエンスアゴラ2025に「ミライなんでも投票センター 今週のテーマ:科学技術」を出展しました【SC教育・SCOLA SIP】
OBJECTIVE.
2025年10月25日(土)・26日(日)に東京・お台場で開催されたサイエンスアゴラ2025に、ブース出展をしました。
企画運営したのは、立教大学 理学部 共通教育推進室(SCOLA)が実施するサイエンスコミュニケーション実践教育プログラム(SCOLA SIP)の修了生。
展示名は「ミライなんでも投票センター 今週のテーマ:科学技術」 でした。
2日間で約500名の方にご来場いただき、多様な世代の参加者と科学技術の未来について考える場となりました。
ミライなんでも投票センターとは?
ミライなんでも投票センターは「未来に向けての選択を楽しくアクション」という理念のもと、投票する場を作っています。ここでは自分の意見だけでなく、他の人の選択が集まります。それぞれの選択の違いに気づいた上で、改めてミライとの向き合い方を考えて欲しい、という思いをこめました。
本展示の入口「ミライなんでも投票センターへようこそ!」
提示したのは、先端科学技術に関する 8つの問い。
問いの出し方や投票形式を工夫することで、単なる賛否ではなく、参加者が「なぜそう思うのか」を言語化しやすいようにしました。
また、来場者が“投票”をきっかけとして、現在も発展し続けている科学技術について知りながら、これからの科学技術とのかかわり方について、他の来場者やセンター員と自然に対話をできるような空間を提供しました。
8つの問いに“投票”して考える展示
問いごとに、ジグソーパズル・輪投げ・ガチャガチャ・紙くず投票など、さまざまな投票体験を用意し、子どもから大人まで楽しく参加できる工夫を凝らしました。
【展示した6つの分野の8つの問い】
1. 医療・生命科学:頭を良くしたり足を速くするためにゲノム編集技術を使ってもいい?
2. 宇宙:こんな宇宙開発は嫌だ。どんな?
3. 都市:安全のために顔認証システム搭載の防犯カメラを街中に設置するのはあり?
4. 食:給食を作るのに3Dフードプリンターを使うのはあり?
5. AI:AIが自動的に生み出した作品は芸術?
6. ロボティクス:(ヒューマノイドロボットと)一緒に住むならどんな姿がいい?
7. 選挙:あなたは江須市の市民。未来をたくすなら、誰に投票する?(上記の科学技術に対して異なる政策を持つ候補に投票)
8. ミライ: 望むのはどちらのミライ?「AIが最適解を導くミライ」or「納得するまで対話していくミライ」
「3Dフードプリンターで造られた給食を食べたい?」という問いに…
輪投げで「あり」に投票しようとしている子どもたち
悩んでいる様子の小学生
※各ブースの詳しい投票数や内訳については、ミライなんでも投票センター公式Xでも公開しています。ぜひあわせてご覧ください。
1.ヒトゲノム編集
この問いでは、1人1票ではなく、1人1ピース。
来場者には、ジグソーパズルのピースを1つ選んではめることで投票してもらいました。
パズルは、選ばれた未来を描いた架空の映画ポスターがモチーフです。
「あり派」は、エンハンスメントによって最速となったアスリートたちに迫るドキュメンタリー『CHAMPION』。
「なし派」は、“改変されない自分”として生きる少女を描いた感動作『私のままで』。
投票することで、未来を選び、「その未来なら、こんな映画が生まれていそうだ」と想像できる仕掛けとして、この投票方法を採用しました。
両者ともにたくさんの意見が寄せられ、
一つの問いから、合理性・倫理性・選択の自由など、複数の視点が交わる議論が生まれました。
「あり派」の意見
・コンプレックスの解消につながる
・人類の発展につながる
「なし派」の意見
他の来場者の意見を読みながら話し合う親子
・親が子の未来を決めてよいのか
・社会的な公平性が保てない
2.宇宙開発
この問いでは、大喜利っぽく自由に記述していただきました。そして、その書いた紙を丸めてゴミ箱に捨てるというアクションをしてもらいました。
ロマンや期待とともに、宇宙ごみなどの課題も指摘される宇宙開発。
そのプラスとマイナスの両面に向き合うため、「嫌だと思う未来像を、あえて“ごみ”として可視化する」投票方法を採用しました。
様々な意見がありましたが、中でも「持続可能性」「公平性」「安全性」への懸念が多く見られました。
ゴミ箱いっぱいに集まった「嫌だと思う宇宙開発」のアイデア
・宇宙資源をめぐる戦争更なる無法地帯の拡大
・他の星にゴミを捨てるような宇宙開発
・早い者勝ちの開発は嫌だ
・おいしい食事をもっていけない宇宙移住
・エイリアンを追い出すかいはつ
・宇宙を完全かいめいする開発 ロマンがないから
3.顔認証システム搭載防犯カメラ
この問いでは、写真撮影で賛成派の方は顔を隠さずに、反対派の方はモザイクで顔を隠して行うことで投票していただきました。
撮影した写真はリアルタイムで会場のモニターにスライド表示され、他の来場者も見ることができる仕組みにしました。“映されること”を実際に体験することで、防犯とプライバシーの関係をより具体的に考えてもらうことを意図しています。
賛成の立場から意見を述べる男性
プライバシーの観点から懸念を示す女性
賛成派意見
・一旦外に出たら公共の場だから
・侵害されて困るプライバシーはないから
・悪いことはしません
・結局顔は防犯カメラに写ってるし安全になるならいい
・事件の解決がしやすくなって良いと思う
・プライバシーがしっかり守られるならあり
反対派意見
・しっかり管理できるのかデータが漏洩したら不安
・「映されたくない」という権利は残されるべき
・監視されてるみたいで嫌!!
・自由な社会に繋がらない
・自分の動きを全て知られるのは生きづらい
4.3Dフードプリンター
この問いでは、ドーナツに見立てたリングで輪投げをすることで、どちらの立場であるのかを投票していただきました。子どもたちにとって身近な給食を取りあげ、さらに輪投げで投票するということで、小さな子どもから保護者まで幅広い世代で一番人気の投票となりました。
肯定意見と慎重意見とで大きく割れましたが、
「自分は良いと思うが、親になったら子どもに食べさせたいかは別」といった声も多く、立場や前提条件によって価値判断が揺れるという気づきが生まれていました。
ドーナツに見立てた輪投げ用のリング
「あり派」の意見
・食べる楽しみが広がる
・食物アレルギーへの応用可能性
「なし派」の意見
・食育の経験が薄れる
・人の手でつくる料理の価値が損なわれる
5.AI
このブースでは、『浦島太郎の後日談』を人間が創作したものと、AIが生成したものの2冊を並べ、まず来場者に実際に読んでもらいました。
そのうえで、芸術であると考える人はAIの本に、芸術ではないと考える人は人間の本に、気になった箇所へ線を引き、理由を付箋で残すことで投票してもらいました。作品を読む体験そのものが、問いへの参加になるよう設計しました。
こちらも様々なご意見があり、
AIが創作に関わる時代において、“作品の価値”をどこに見出すのかを他者の意見と並べながら考える機会となりました。
AI作の本に貼られた付箋の意見「芸術である」
・人間もAIも受けてきた学習をもとに話をつくるので、どこかで見た話になるはず
・人がつくろうがAIがつくろうが何かしらを基にしてるのは同じ
・昔の人が書いたような作風だった。よくできてるなあ、と
人間作の本に貼られた付箋の意見「芸術ではない」
気になった文章に線が引かれ、付箋に理由を書き込まれた本
・心がこもってるから
・結局参考にするのは人間のものだからAIが作ったとしてもそれは人間の作品だと思う
・AIには、「自分が見たい作品」が無いから、情熱がない
6.ヒューマノイドロボット
この問いでは、一緒に住むヒューマノイドロボットの姿は、①「完全に機械」〜⑩「人間と見分けがつかない」までの10段階のうちどれが良いかを選んで、ボールを箱に入れることで投票していただきました。
選ばれた理由はさまざまですが、主に次のような傾向が見られました。
①〜④:ロボットらしさ重視
「機械であってほしい」「人間そっくりは怖い」という意見が中心。
⑤〜⑦:ほどよく中間の姿
ロボットらしさと人らしさのバランスを求める声が多く集まりました。
⑧〜⑩:人間に近い外見を希望
親しみや感情的な安定につながるとして、より人間寄りを支持する意見も。
人によって「親しみ」「かわいさ」「境界の明確さ」「安心」「機能性」など、重視するポイントが大きく異なり、“理想の姿”が人の価値観によって多様に揺れ動くことが見える投票となりました。
・見分けがつく方が安心
・壊れたら悲しいので“人そっくり”は避けたい
・ペットのような可愛さがあれば十分
・親しみは欲しいが“不気味の谷”は避けたい
⑤〜⑦:ほどよく中間の姿
・親しみやすさと機能性の中間
・顔など一部は人型だと関わりやすい
・人間らしいけれどどこか違う“決定的な差”があると良い
⑧〜⑩:人間に近い外見を希望
・高齢者ケアには“人に似ている”方が良いのでは
・自分と近い外見だと自然に会話できる
・カスタマイズして“自分だけの相棒”を作りたい
・友達のように接したい
投票後に黒幕をめくることで結果が見える投票箱
7.選挙
提示したのは、未来の科学技術に対して異なる方針を掲げる複数の“未来の立候補者”たち。参加者は、科学技術とのつき合い方をどの人物に託したいかを考え、まるで実際の選挙のように投票を行いました。
成瀬 凜(人類能力強化派)
ヒトゲノム編集や3Dフードプリンターなど、人の能力や生活を向上させる技術を推進する一方で、人の役割を脅かすAIやヒューマノイドの導入には慎重。「人が主役の未来」を掲げる。
大野 俊史(権利重視派)
すべての存在の権利を尊重する立場。AIによる芸術制作や顔認証カメラ導入には反対し、人の尊厳を最優先。ヒューマノイドや動物の権利も含めた社会のあり方を提案。
守田 あかり(安全重視派)
子どもや地域の安全・安心を最優先。顔認証カメラを推進する一方、宇宙ゴミ問題を理由に月面開発には慎重。人の手による営みを重視。
神崎 隼(経済重視派)
経済成長とイノベーションを軸に、宇宙開発やAIを積極的に推進。新産業創出を重視する一方、社会構造を急激に変える3Dフードプリンターなどの技術には慎重な姿勢。
東谷 景(文化芸術派)
AIとの共創を推進し、文化的価値の創造を重視。ヒトゲノム編集や顔認証社会には慎重で、「人とテクノロジーのバランス」を探る立場。
本物の投票箱にドキドキしながら、未来に一票!
架空のセンターでありながら、手に触れる選挙体験はまさに本格的。未来を選ぶ手応えを感じられる仕掛けとなりました。
注目の投票結果は…
2日間にわたり時間をずらして計4回投票を行いましたが、なんと当選者は回ごとに異なる結果となりました
参加者の価値観の多様性が表れる形となりました。
・今の時代、AIに慎重な人も必要
・「人が主役の未来であるべき」というのが自分の考えと一致してるから
大野俊史(権利重視派)
・ヒューマノイドを使った未来にしたいから。また、ヒトゲノム編集はあまりしたくないから。
・人間以外も平等に権利は与えられるべき。
・AIを推進しつつ導入ポリシーが明確だから
守田あかり(安全重視派)
・子供の安心を推進しているところが良い。
・人間の出生に関わる分野はより一層慎重であるべきだと思うので
・子育てに力を入れているので、若手の育成も進みそう。地球にも多く問題がある中で月面開発に慎重なのはいいことだと思った
神崎隼(経済重視派)
・経済が技術開発を着実にすすめると信じるので
・宇宙開発は推進してもらいたい 食料難に関しても取り組んでくれそう
・生命に関する技術は慎重な議論が必要だと思うが、他先進技術は利益につながるため推進
東谷景(文化芸術派)
・技術の推進と必要な警戒感とのバランスが一番取れていると思った
・人とAIの共創がポイント 人も成長すべきだと思う
・文化とテクノロジーに関心があるので政策のバランスが良さそう
8.ミライへの投票
最後の投票は、個別の科学技術そのものではなく、未来における“ものごとの決め方” をテーマにしました。来場者には、ガチャガチャを回すことで投票していただきました。
未来のあり方について考える子どもたち
来場者との対話から見えた“未来”の科学技術との関わり方
子供たちもたくさんの方が投票理由を書いてくれました!
来場者からは、
「普段考えないことを考えるきっかけになった」
「家族で意見が分かれて面白かった」
「問いの出し方で考えが変化することを実感した」
などの声が寄せられました。
来場者と対話するセンター員たち
多くの方が
「科学技術をただ推進すればよいわけではない」
と語り、倫理面や安全性、社会への影響、人の暮らしとの調和など、様々な観点から、科学技術とのかかわり方について考える姿が見受けられました。投票理由は人それぞれ異なり、投票というアクションを通して多様な価値観を可視化することができました。
最後に
ミライなんでも投票センターのセンター員たち
ですからセンター員たちは、来場者と直接向き合って話す機会を作ろうと、企画・展示をより一層盛り上げる工夫をたくさん用意しました。そのうちの一つが、来場者が展示ブース外を歩いているセンター員に声を掛けることで始まる対話です。この対話では、未来での科学技術に関する物事の決め方について、賛成・反対といった結論だけでなく、どのような基準や価値観で物事を判断するのかまで話題が広がりました。その結果、来場者一人ひとりの考えの背景や重視している点について共有する時間が生まれ、より丁寧な意見交換につながったと感じています。
センター長の伊万里司さん
ミライなんでも投票センターは、“科学技術と社会の関係を、投票というアクションを通じて考えられる場”として今後も展開していきます。
サイエンスアゴラ2025にご来場くださった皆さま、ありがとうございました。
文:宮内桜(理学部化学科4年)、鈴木光(理学部生命理学科3年)、須﨑渓介(理学部物理学科3年)
【企画・運営】
宮内桜、鈴木光、須﨑渓介、戸室琴乃、不藤里菜、加藤珠莉、多部田雄大、中村陽太(SCOLA SIP3期生)権野にこ(SCOLA SIP2期生)
早川日奈子、大井日茉莉、森脇絵理子、猪股マノア、伊陽鞠、小川幸輝、長森優輝、鈴木海都、塚田桃子、萩原健太(SCOLA SIP4期生)